少しずつ忍び寄る春の気配。
寒気も少しずつ緩みはじめてくると うらうら散策したくなるのは、工房の庭でのんびりしているノラネコも一緒だと思う。
工房の南向きの出窓に2頭身のずんぐりとした猫の貯金箱が左前足をあげ毎日見守っていてくれています。このよく見掛けるタイプに発祥の地は、てっきり愛知県瀬戸と思い込んでいました。
以前、近くの図書館で出会った一冊の本(写真集)を何度も繰り返し見ているうちに、その由来やデザインの多さ面白さにふつふつ。とうとう招き猫を描いてみたくなったコトがはじまりでした。
ネコは、奈良時代に経典などをネズミの害から守るため中国から日本に渡来(輸入された)しました。江戸時代では、蓄えられた穀物や織物用の蚕を喰らうネズミを駆除する番犬ならぬ番ねこ、ガードにゃん。ネコは利益をもたらす頼もしい小動物と親しまれたそうです。しかし、江戸時代初期頃のネコの数は少なく貴重なため高価だったといった記録もあるとか、養蚕地ではネズミ捕りにたけたネコは、馬の5倍の値がついたこともあったとか。その為か、ネズミ退治の呪具として効果があると猫絵も描かれたそうです。
ネコは大陸からやって来たとは~今は、ネコがいない日本なんて考えられません。まさか、いにしえの頃からネコと絹糸は、深い繋がりがあったとは驚きにゃ。
ちなみに、中国でのネコは、豊穣や富のシンボル「稲穂の精霊」として扱われていたそうです。
また、ネコと蝶の組み合わせの中国語の音が長寿と通じることから、富貴を表す牡丹と猫と蝶を供に描き長寿富貴を願う吉祥画と親しまれていたそうですよ。
さて、招き猫の由来にはいくつかの説があるそうですが、
発祥の地の一つ、東京都世田谷区の「豪徳寺の白猫」とする説、昔は寂れたお寺でしたが、江戸時代に彦根藩主の井伊直孝が鷹狩りの帰りに門前を通りがかったら、手招きをする猫がいたので足を止めて休んでいたところ、激しい雷雨がきて、雨に濡れずにすんだことに大感激して、井伊家の菩提寺にした。福を招いた猫が死んだ後は、大切に境内に祀られた。
そして、猫は福をもたらす霊力をもっていると信じられ、
花街や飲食店などでその姿をかたどった招福猫児が人気呼んだんだとか。
江戸時代後期に誕生した縁起物の招き猫は、右前足(右手)をあげている猫は「お金」を左前足(左手)をあげている猫は「お客」を招くと長く愛されてきました。また、前足(手)は耳より上に挙げる猫がより良い知らせを招くとか。猫の色についても白い招き猫は「開運招福」万事に福を招くと愛されてきました。黒い招き猫は「魔除け」「厄除け」これらを一身に吸い取ってくれる強い味方と大切にされたそうです。猫は、飼い主の恩義に応えてくれる霊獣としても有名ですので、大切にかわいがってあげるときっと福を捕まえてくれるかもしれませんね。
手描き友禅 招き猫
*『まめ福・招き猫』が身に着けている首輪の金の鈴は、古来から邪気を祓い神様を引き寄せる力が宿っているといわれます。赤い首輪にヨダレ掛ケ 赤色は、明るく生命力に満ち「厄よけ」の色といわれています。それに緑と紫色、前足には小判と鯛が加わり一層賑々しく縁起物らしい華やかさを生んでいます。贈り物にも喜ばれるモチーフにしました。
*頭や手足に描かれた丸っこい緑の友禅柄は唐松。松の葉を表しています。
松は古来から、緑色は常盤色(ときわいろ)であることから常磐木と呼ばれ 真冬でも青々と緑を絶やさない姿は、生命力にあふれ「繁栄」「不老長寿」永遠の若さの象徴と考えられました。また、松葉は2本の針葉で枯れても二つが離れないことから「夫婦愛」の象徴と現代にもおめでたい席で親しまれていますね。まめ福招き猫を2対並べて置けばさらなる幸福を招いてくれるかもしれません。
加賀友禅の文様としても松文様は、千年の齢を保つ吉祥樹とされたことから、めでたいことはもちろん季節を選ばず、さまざまな形で図案化、文様化され親しまれています。また、吉祥の文様を数多く組み合わせ重ねることは、着物文化では格が高い最上級のめでたさを表すとされてきました。
おめでたい模様を数多く描くことは、幸せが末永く続くように家族の願いが込められています。
まめ福・招き猫は、めでたいをいっぱい重ねた縁起良い招福猫に仕上げています。
お祝いの贈りものとして、猫が好きな方にプレゼントすると喜ばれるかもしれません。
自由な世界であるけど、何でもいい訳でもないと思う。幼い頃の感じた美しい記憶や日常の断片から引き寄せられたもの。一つ一つ試行錯誤を重ね、私という感覚を通ってめでたさが組み合わさった小さな加賀友禅染額「まめ福シリーズ.招き猫」です。
気まぐれな猫は時代を映す鏡のように色や姿、こめられる願いも意味も付加されバリエーションはさらに増していくのですね。
最後までお読みいただきありがとうございます。
手描き加賀友禅 和小物「まめ福・ぷち福」を手に取ってくださった皆さまにさらなる幸福を呼びこんでくること、
そして大切な人に気持ちが伝わりますように こころから祈っております。
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